最高裁判所第三小法廷 昭和30年(あ)1532号 決定 1957年6月25日
本籍並びに住居
福岡県山門郡大和町大字六合一八一九番地の三
農業兼肥料販売主食集荷業
松藤武一
大正二年八月一二日生
本籍並びに住居
同県同郡同町大字六合一八一九番地の三
農業
松藤久男こと
松藤久夫
昭和五年一一月六日生
右の者等に対する各食糧管理法違反被告事件について昭和三〇年五月七日福岡高等裁判所の言渡した判決に対し各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件各上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人等の連帯負担とする。
理由
弁護人穴道進の上告趣意第一点について。
論旨は、弁護人牟田真に対し国選弁護人選任命令書および控訴趣意書提出最終日指定通知書が同解任命令書と同時に送達されているから、右指定通知書の送達の効力は認められないのであり、他面本件被告人等の弁護人田原昇に対しては右指定通知書の送達がなされていないから、結局、原判決は、弁護人に対し何ら右指定通知をしないでなされたもので憲法三七条三項に違反すると主張する。しかし、仮りに、所論のとおり、弁護人牟田真に対する控訴趣意書提出最終日指定通知の効力が認められず、従つて弁護人田原昇に対し右通知がなされていない違法があるとしても、本件記録によれば、被告人両名に対しては右通知が適法になされており、その弁護人田原昇において、右指定の提出期日最終日に控訴趣意書を提出しておるのみならず、原審第一回公判期日に出廷の上右の点については何らの異議を述べることもなく、自己の外牟田弁護人提出の各控訴趣意書に基づき陳述した事実が認められるから、所論通知のなされなかつた違法は治ゆされたものと解するを相当とする。従つて、所論憲法違反の主張はその前提を欠く。
同第二点について。
論旨は単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。所論の違法が治ゆされていることは論旨第一点について説明したとおりである。
同第三点について。
論旨は量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならない。
また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島保 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)